よくあるご質問

マンション投資の繰り上げ返済で注意することは?

繰り上げ返済の対象を選ぶポイント

マンション投資を実践している中では、余剰資金ができたタイミングなどで購入時に借りた借入金の、一部繰り上げ返済を検討することもあるでしょう。
ここでは、複数の物件を所有していたり、複数の借入を活用している場合に、どのような観点を考慮して、繰り上げ返済する対象を選んだらよいのかまとめました。

参考としていただければと思います。

たとえば手元に繰り上げ返済資金として100万円あったとして、どの物件や借入金に充当しようか、検討するケースです。考慮した方がよい点を3つに分けて説明します。

①金利 ②ローン残年数 ③その他(物件ごとの借入金比率など)

①金利

これはシンプルですが、複数の借入金がある場合に、その金利を比較して、どの借入金への繰り上げ返済を優先するかということです。

2戸の物件でマンション投資をしていて、借入金利がそれぞれ2.0%3.0%だったとします。
この場合、繰り上げ返済100万円に対して削減できる年間の金利は、

100万円×2%=2万円と100万円×3%=3万円で、1万円差が生じます。

金利負担だけを考えるなら、当然に金利が高いところに繰り上げ返済をするという結論になるでしょう。
比較する際に、金利が変動なのか固定なのかや、団体信用生命保険料の有無などが、借入ごとに異なっている場合は、当然にその辺りも調整して考える必要はありますが、このような同じマンション投資の借入内での比較は、そこまで複雑ではないかもしれません。

ただ、現実的に繰り上げ返済を検討する際には、目的が異なるローン間での比較が必要となるケースもあるでしょう。この場合、表面的な金利の優劣だけで結論を出さない方がよいこともあります。

目的が異なるローン間の比較

たとえば、マンション投資のローン2.0%と教育ローン1.8%が繰り上げ返済の比較対象になっているとしましょう。

この場合、どちらも変動金利団信込だとすると、単純に金利だけをみれば、マンション投資の2%の方へ繰り上げ返済した方が良さそうに見えます。

ただ、マンション投資の金利は経費計上ができ、所有者が得ている家賃収益に対する一定の節税効果が発生しています。

個人への税率は、その所得水準や扶養の違いで個人差があるので、一概に言えるものではありませんが、たとえば、繰り上げ返済を検討している方の所得税住民税の合算税率が約20%だった場合、

金利が経費計上できるということは、マンション投資2.0%の実金利負担は、2.0%×(100%-20%)で、1.6%とみなすこともできます。

(※この考え方をする場合は、厳密には最終的な不動産所得がプラスとなるかマイナスとなるかでも計算方法は異なってきます。この後の、3つ目「その他」の内容も参考として下さい)

こうなると、このケースの場合は金利削減効果だけを考えると、2.0%の投資ローンよりも1.8%の教育ローンに繰り上げ返済した方が、有利ということになります。

ここでは教育ローンと比較をしましたが、自宅ローンの場合は、投資用ローンでは使えない住宅取得控除などもあります。
目的の異なるローン間で比較をする際には、そのローンごとに付随してくるものも含めて検討する必要があると言えます。

②ローン残年数

繰り上げ返済のメリットを、月々のキャッシュフロー(現金収支)を増やすことに求めるとすると、金利だけでなくその借入ごとのローン残年数にも注目する必要があります。

たとえば、投資用マンションを2戸所有していて、1戸は期間30年でローンを組み、もう1戸は期間20年のローンで購入していたとしましょう。
(単純化のため、当初借入金はどちらも2,000万円、金利2%とします)

この場合、月々の支払いは前者(30年)は73,923円、後者(20年)は101,176円と、当然ですが違いが生じています。

それでは、この2つの借入金に100万円の繰り上げ返済をした場合の効果はどう違うのでしょうか。
(ここでも単純化のため、購入してすぐに繰り上げ返済をするケース、つまりローン残年数=当初ローン年数で考えます)

金利はどちらも2%で、借入金2,000万円⇒1,900万円に変えると、月々の支払いは、
前者(30年)は73,923円⇒70,227円(▲3,696円)
後者(20年)は101,176円⇒96,117円(▲5,059円)

と、ローン年数が短い方へ繰り上げ返済した方がキャッシュフロー改善効果が高いことが分かります。

ローン計算ツールの活用

ここでは、金利などの条件を同一として比較してみましたが、実際に、皆さまが複数の借入を活用している場合は、ローン残年数とともに、金利やローン残額なども異なってくるはずです。

そのため、金利電卓やエクセルのローン計算関数、ローン計算アプリなどを活用して、残年数/金利/残額、それぞれが異なる借入金に同金額を返済した場合のキャッシュフロー改善効果を比較するのが良いと思います。
(弊社代表寺内は、ローン計算はiloanというアプリを使っています。)

たとえば、100万円の繰り上げ返済先を検討する際に、

「1,800万円、金利2.0%、ローン残年数20年」と
「1,500万円、金利2.5%、ローン残年数30年」

のどちらに返済をすると有利なのか、ぱっと見ではすぐに判断ができません。

この場合、前者を1,800万円⇒1,700万円、後者を1,500万円⇒1,400万円に変えて、ローン支払い額をそれぞれ算出してみると、キャッシュフロー改善の比較がしやすいと思います。

ちなみにこのケースだと、

前者へ100万円繰り上げ返済すると、
キャッシュフロー改善効果5,059円
後者だと3,952円と、前者へ軍配が上がります。

ただし、少し話を戻して単純な金利だけの比較をしてみると、前者は2.0%後者は2.5%なので、金利削減効果で見ると後者が高くなります。

こういった場合、キャッシュフロー改善効果を取るのか、金利削減効果を取るのかは、その投資家ごとに判断の違いが出てくるものと思われます。

③その他 物件ごとの借入金比率など

繰り上げ返済を検討する際に、注目して欲しい主なところは、ここまで見てきた金利と残ローン年数となりますが、その他、ケースによっては注意した方が良さそうなところを補足します。

仮にマンション投資している方の、年間の不動産所得が帳簿上でマイナスとなっていて給与所得などと損益通算している場合は、所有している物件ごとの繰り上げ返済比率を考慮した方がよいことがあります。

知っている方も多いかもしれませんが、会社員の方がマンション投資をしていて、マイナスの不動産所得がある場合は、給与所得と損益通算することで、所得税や住民税に対する節税効果が発生することがあります。

その際の細かな注意点として、不動産所得を算出する経費として、金利はその費用計上が認められているものですが、金利の内、購入した物件の土地代にかかっている部分については、損益通算の対象から差し引く必要があります。

少し分かりにくい話ですが、つまり複数の物件を所有している場合は、特定の一つの物件に集中的に繰り上げ返済をするよりも、物件ごとに、

購入時の土地代を超えないレベルまでの繰り上げ返済に留めておいた方が税務上有利になるケースがある

ということです。

繰り上げ返済は総合的な判断で

また、当然に借入先の金融機関ごとに、繰り上げ返済手数料などのコストも異なってくるはずなので、その辺りも考慮に入れるべきでしょう。

他にも、繰り上げ返済をすることは、新たな物件を購入するための原資を使ってしまうともみなせます。

つまり100万円で年間2万円の金利を節約するのか、それともその100万円を使って新たな収益物件をもってより多くの収益を目指すのか、などの観点も入ってくることでしょう。

繰り上げ返済を検討する際には、このように様々な観点から、検討されるのがよいと思います。

参考としていただければと思います。

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