ワンルーム マンション投資による節税
聞いたことがあるという方も多いかもしれませんが、会社勤めなどをされている給与所得者がマンション投資をすると、毎月のお給料から払っていた所得税などの税金が、確定申告をすることで戻ってきたり安くなることがあります。
ここでは、このようないわゆる節税効果について、マンション投資の中で一番身近な対象とも言える、中古の東京ワンルームマンションを持ったケースの話をします。
実際にどのくらいの節税効果があるかは、どのような物件をどういうローンの組み方で持つかや、
どれぐらいの所得水準の方が持つかなどによって変わってくるので、一概には言えないところもあるのですが、あくまでも、マンション投資と税務効果の大まかな理解を助ける入口としての説明をしておきたいと思います。
算出方法
会社からもらう給与所得と、不動産を人に貸して得られる不動産所得は、どちらも総合課税の対象になるので、この2つの所得がある場合は、原則は確定申告によって2つの所得を合算して支払うべき税金が決まることになります。
この時に、不動産所得がマイナス、つまり得られている収入よりもかかっている経費の方が大きくなっていれば、給与所得にマイナスの不動産所得を足し合わせることになるので、毎月のお給料から天引きされていた所得税が確定申告をすることによって戻ってきたり、翌年の6月以降に本来払うべきだった住民税が安くなることになります。
(所得税と異なり、支払うことになる住民税はその前年の所得に応じて決まってきます)
では、この戻ってくる税金などは、「節税効果がある」と喜べるほど大きな金額になり得るのかというと、私の経験上、戻ってくることはあってもそこまで大きな額にはならない、というのが結論となります。
不動産所得で得られる収入とは主に家賃収入となり、不動産所得で発生する経費は、大まかには管理費や固都税などの運営費や借入金の金利、減価償却費などとなりますが、家賃収入を大きく上回るほどの経費が掛かるケースはあまりないためです。
数字でみる節税効果
イメージをつかむために、簡単に数字で追いかけてみましょう。
たとえば、一般的な都内の中古ワンルームマンションで投資を始めたとします。もちろん細かくみれば物件にもよりますが、物件の価格と得られる家賃収入との比率は、ここ最近の相場観ですと表面利回りなら5%前後、運営費などを差し引いた手取利回りなら4%前後といったところでしょう。
つまり2,000万円ぐらいの物件を購入したとすると、入居者からは年間でおおよそ100万円ぐらいの家賃が得られる計算となります。
(2,000万円×5%=100万円)
一方で、経費のうち運営費として考えられるものは、建物管理費や修繕積立金、賃貸管理手数料や固都税などになりますが、手取利回り4%で考えると、賃貸経営をすることで発生するこれらの経費は年間でおおよそ20万円ほどになります。
(2,000万円×5%-2,000万円×4%=20万円)
また、他の経費に目を向けると、2,000万円の物件を購入するにあたり、(単純化のために)全額を銀行から金利2%の融資でまかなったとすると、2,000万円×2%で年間おおよそ40万円の金利を負担することになります。
さらに、2000万円で購入した物件の建物部分は、減価償却費として帳簿上で経費計上していくことが可能です。
ここでは減価償却についての細かな説明は省略しますが、たとえば、2,000万円のうち1,000万円が建物代、30年で償却していく物件だとすると、1,000万円÷30年で、1年間に30万円ほどを経費計上していくことになります。
(参考:国税庁HP「減価償却のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2100.htm)
ここまでをシンプルにまとめてみると、年間の不動産所得は、収入-経費で、100万円-20万円-40万円-30万円=10万円となります。
つまりこのケースでの不動産所得は、帳簿上で年間プラス10万円ということです。
このように計算した結果がマイナスとならなければ、いわゆる給与所得と合算した節税効果は発生しないのですが、見込んでいた家賃が大きく減額されない限りは(つまり長い空室期間が発生しない限りは)、
大きなマイナスとなることはなさそうです。
補足
さらに細かな補足をすると、仮にこのような計算で得られる「収入-経費」がマイナスになったとしても、経費で認められている金利のうち、購入した物件の土地代にかかっているものは、不動産所得がマイナスになって給与所得などと損益通算する場合はその経費から差し引く必要などもあります。
(上記の事例だと、年間金利40万円のうち、20万円が土地代にかかっている金利であり、不動産所得がマイナスとなる場合は、この20万円は経費から差し引く必要があります)
一般的な都内の中古ワンルームマンション投資では、大きな節税効果が見込めにくいということが
おおよそでも理解できるかと思います。
ただし、一定の節税効果が見込める年がまったくないこともありません。
節税効果が見込める年度
マンション経営を実践するなかで、分かりやすく一番経費がかかるのは購入初年度となります。
購入時にかかる数十万円の登記諸費用や、購入後に数か月遅れで一度だけ請求がくる不動産取得税などが発生するためです。
そのため、初年度分の不動産所得は一定額以上のマイナスになることもあります。
マンション投資のメリットの一つとして、所得税などへの節税効果がうたわれることがあるのは、こういったところから来ているのかもしれません。
ただ、ここまで見ていただいて分かるとおり、2年目以降も大きめの節税効果が得られるケースはあまりなさそうです。
マンション投資に様々なメリットがあることは間違いありません。
入居者が支払ってくれる家賃を資産形成に組み込める点や、借入金利と家賃利回りのギャップ収益、インフレ対策、団体信用生命保険効果などが代表的なものでしょう。
一方で、節税効果には一部で言われているほどの過度な期待ができないことも理解しておきましょう。
なお、ここでは中古の東京ワンルームマンションを持った場合の話をしてきましたが、手取利回りが中古より低くなる新築物件や、物件価格のうち土地代が安いため、建物価格の割合が高くなる地方物件の場合は、また話は変わってきます。
総合的な観点が必要
新築物件はもちろん、地方の物件もその建物割合から節税効果が高くなることもありますが、新築の中古と比べた手取利回りの低さは、それだけ収益性が小さいということで、地方と都内の比較では、当然に空室率といった注意が必要な指標などが異なってきます。
節税効果が高まる分、その他のメリットが減る、もしくはリスクが高まるとも言えますので、投資対象を選別する際は、総合的な観点から判断をする必要があるでしょう。
以上、参考としていただければと思います。